「進化する学会―さらに楽しい学会にしたい」
関西英語教育学会会長 横川 博一(神戸大学)
6月8日・9日の二日にわたって開催された今年の研究大会も成功裡に終えることができました。多くの皆様にご発表・ご参加をいただき、感謝しております。
年に一度開催するこの研究大会も今年で30回を数えました。ですから、関西英語教育学会も設立30年ということになります。30年前、私は大学院生でした。その少し前から、関西英語教育学会の前身である日本英語教育学会関西支部の研究大会などに参加していました。秋から冬にかけて3回にわたって連続シンポジウムという、今のKELESセミナーにあたるようなものが当時もありました。テーマも内容もとても興味深いものでしたが、ほとんど参会者がいないような回もあり、院生ながらに、とても残念に感じていました。
そうこうしているうちに、関西支部は日本英語教育学会から独立し、新たに関西英語教育学会が誕生することとなりました。初代会長には、当時京都教育大学教授であった齋藤榮二先生、副会長には京都府立大学教授の瀬川俊一先生、事務局長には京都教育大学助教授の三浦一朗先生が就任され、学会は新たなスタートを切りました。それまでの伝統はしっかり受け継ぎつつ、新しい伝統を築いていくという気概に溢れ、活気に満ち溢れていたように、少なくとも私は感じていました。研究大会やセミナーにはたくさんの発表応募があり、大勢の参加者がありました。学会がふたたび息を吹き返したかのようでした。もっと平たく言えば、学会が元気になったんです。そこに集まった人の熱意が学会を元気にし、そして集まった人をも元気にしてくれたんです。
ところがそんな矢先に、三浦先生が急逝され、私たちは深い悲しみに包まれました。突然のことであり、学会のこうした流れを止めないためにも、齋藤先生は私に事務局長をやってくれないかとおっしゃられたのです。名簿の管理から年会費の納入チェック、研究大会やセミナーの講師の講師依頼からプログラムの作成、当日の運営の采配まで、私は必死にやりました。齋藤先生、瀬川先生、事務局メンバーが京都教育大学に集まって、事務局会議をやり、その後、ニューズレターを印刷し、それを三つ折りにしてから封筒詰めして郵便局に運ぶという作業を何度繰り返したことか。そして夜は食事にカラオケまで(笑)。くたくたになるんですが、ワイワイガヤガヤ、とても楽しくやったものです。
同じ事務局の加納隆広さんと、関東圏でやっているような卒論や修論を発表し、若手が切磋琢磨しあうような場を作りたいと、「卒論・修論研究発表セミナー」を立ち上げたのも、設立後まもなくです。齋藤会長は快諾してくださり、これが成功するように各方面に呼び掛けてくださいました。その後、会員にとってもっと気楽でフレンドリーな情報誌『KELESジャーナル』の刊行も実現しました。
あれから30年。私のような者が会長に選出されるなんて、なんという運命の悪戯か。しかし、私はこの試練を楽しみたいと思います。このたび役員も交代があり、経験豊富な先生方に加え、新進気鋭の若いみなさんも大勢お迎えしました。役員の皆さんと、そして会員の皆様とともに、関西英語教育学会の新しい(そして楽しい)伝統を創っていきたいと、気を引き締め、意欲を新たにしているところです。
(関西英語教育学会報 2024年度 第1号より転載)